AKI INOMATA


Galloping Nambu breed horse
ギャロップする南部馬
2019 HD video
Galloping Nambu breed horse

 学生の頃、毎日暗室に籠ってはモノクロ写真の紙焼きに明け暮れていた。暗闇の中での、わずかな視覚と触覚、そして勘に頼った作業を続けて行くと、第六感のような何かが覚醒してくるような感覚があった。見えないものとのインタラクションから見えるものをつくっていく。あの不思議な感覚は、今でも時折蘇ってくる。アナログからデジタルカメラへと移行が進み、当時使っていたフィルムや印画紙は廃盤になってしまった。大学のカリキュラムからも暗室作業は撤廃されつつある。  100年前まで、私たちの家に馬が同居することは、とても一般的だった。馬とともに畑を耕し、ものを運び、移動していた時代。そこには馬とのコミュニケーションによって、存在していた環世界のようなものがあったのではないかと想像する。  この作品は、十和田市現代美術館での滞在制作によって作られた。青森県の十和田市は、かつて日本有数の馬の産地であった。当時、育てられていた和種馬である「南部馬」は、暮らしを支える存在であったにもかかわらず、現在では絶滅してしまっている。正確な南部馬の姿形を今に伝える資料は少ないが、最後の南部馬とされる「盛号」の骨格標本が盛岡農業高校に残っている。その標本を元に復元した幻の南部馬の骨格を十和田の雪原に走らせ、エドワード・マイブリッジによる世界最初の連続写真《ギャロップする馬》へのオマージュとして、アニメーション作品にした。